第22回成人のためのてんかん診療フォーラムに参加しました
令和4年10月8日、オンラインにて、成人のためのてんかん診療フォーラムに参加しました。
「てんかんの精神症状に対する治療戦略」愛知医科大学 精神科学講座 准教授 櫻井 高太郎 先生
外来に受診されるてんかん患者さんを調査すると、約3割に、てんかん精神病、気分障害、神経症(PNESを含む)などの精神症状があることがわかっているそうです。
また、精神発達遅滞、自閉スペクトラム症を伴う方もいらっしゃいます。患者さんの不安や抑うつ症状を取り除くには、まずはてんかんの適切な診断と治療をしていくことが重要です。
また、PNES(心因性非てんかん発作)は、診断プロセスそのものが治療の第一歩ですが、医師でもPNESとてんかん発作の鑑別は難しいそうです。
PNESは一定期間観察し、診断を確定し、不要な抗てんかん薬は減薬中止していく必要があり、転換性障害としてきちんと対処することが求められます。
「高齢者てんかんと認知症の鑑別―相互関連性を含めて―」上善神経医院 院長 伊藤 ますみ 先生
てんかんが認知症と誤診されやすい理由は、意識消失している記憶がないため、自覚的な物忘れと思ってしまうことが多く、物忘れ外来にかかってしまうことが多いためであるようです。記憶障害を呈する発作として、側頭葉てんかんの特殊型で、初老期以降に発症する等の特徴があります。
発作間欠期にも特異な認知機能低下が持続するため、より認知症と誤診されやすくなります。しかし、これらは抗てんかん薬で改善するものです。
認知症に極めて類似するものとして「持続性てんかん性記憶障害」があります。記銘力の低下、自発性低下、易怒性、うつなどの精神症状を伴うことやADLの低下が顕著に表れます。てんかん発作が欠如したり、遅れて発症したりすることもあるため注意が必要ですが、こちらも抗てんかん薬にて症状が改善します。
また、50歳以上のてんかん患者はてんかんのない患者よりも認知症の発症率が高いとされています。伊藤先生の病院でも比較調査をされており、高齢発症てんかんに記憶障害の合併が多いという結果が確認されました。
抗てんかん薬で認知機能の低下を抑制する事ができないかを検討する研究がなされましたが、現段階では思うような結果は得られておらず、今後も引き続き研究が必要であるそうです。
以上のようなお話をうかがい、てんかん患者さんの発作状況の観察だけでなく、精神面・認知面にもしっかり目を向けてかかわらせていただくことが重要であるとあらためて学ぶことができました。