てんかん診療連携ウェブセミナーに参加しました
令和4年8月2日、てんかん診療連携ウェブセミナーに参加し、下記の2つの講演を聞かせていただきました。
総合座長:名古屋大学大学院医学系研究科 障害児(者)医療学寄附講座 教授 夏目 淳先生
【講演1】名古屋大学医学部附属病院 小児科 助教 山本 啓之 先生「小児科からみたトランジションの現状と課題」
トランジション(移行)とは、小児を中心とした医療から成人を対象とする医療に切り替えていくプロセスのことです。てんかん治療では適切なタイミングでトランジション(移行)することが重要ですが、小児科医が成人になった患者さんをそのまま診ていることが多いという現状があるそうです。
なぜこのような現状になっているかという背景には、精神的、心理的、内科的合併症を診ることの難しさや、近くに成人てんかんの専門医がいないことが挙げられるそうです。
てんかん治療において、症状やサポートの必要度は患者さんによって大きく異なります。個々の状況に応じた形でのトランジション(移行)が必要であり、小児科医と成人てんかん専門医の連携が重要であるとのことでした。
そして、患者さんが未成年である小児科では、保護者の意向が治療の中心となることが多くみられますが、患者さんが成人になるにつれ、患者さん自身が自分の病気を理解すること、そして患者さん自身が中心となって治療していくことが重要であるとお話しされていました。
【講演2】 医療法人福智会 すずかけクリニック 院長 福智 寿彦「トランジションの受け皿としての役割~発達、リハビリ、就労を踏まえて~」
講演2は当法人理事長による講演でした。てんかん治療のトランジションのポイントとして、
- 移行時期は高校生になったタイミングが良いこと
- 成人期になると副作用の問題などからリスクがあっても変薬しなければならないケースがあること
- 移行期に、治療の主体を保護者から本人に移行することが大切であること
が挙げられていました。
そして、患者さんの人生全体を考えて就労支援をすること、てんかん発作のコントロールだけではなく、患者さんが自分らしく生きることや社会の中で役割を持つことが大切であるとのお話がありました。
また、てんかん治療におけるリカバリーの4つのステップについて解説がありました。そのステップとは
- 希望:目標を見つける
- エンパワメント:自分の強みに注目する
- 自己責任:自分の目標・行動・選択に責任を持てるようにする
- 自分の役割:社会の中で役割を見出し、自信を強化する
の4つです。
このリカバリーの概念は、てんかん治療だけでなく、福智会で関わらせていただく様々な患者さんの治療に共通する概念です。今後も、この概念を常に念頭に起きながら、福智会職員一同、みなさんのリカバリーをサポートしていきたいと思います。